アラド戦記 > イベント

Season8 Act17 混沌のオズマ

オズマレイド

ストーリー - 死から蘇りし者

ペル・ロス帝国で最も明るく輝き、最も悲惨な最期を迎えた星。
カザンと共に皇帝の側近として帝国民に愛され、尊敬された者。
そして反逆という屈辱的な罪名で皇室と帝国に見捨てられた者。

一時はペル・ロスで最も美しい女性を伴侶としていた男。
帝国の羅針盤であり、引導者と呼ばれた知恵深く聡明だった存在。

最も明るく華やかだった星は憤怒と怨恨に燃え上がり、ペル・ロス帝国に降り注いだが
それは言葉通り、まさに災いである。

愛する女性の家門であり、ペル・ロス帝国で最も栄えていた黄金の都市「エレリノン」
最も明るく輝いていた都市は聖戦の炎で100年あまりの間、戦争の業火が消えることが無かった。
黄金色に輝いていたそこは、炎に包まれた混沌の都市となってしまったのだ。

大きく華麗な炎ほど、漆黒の灰を残すもの。
帝国で最も大きく輝いていた星、帝国の黒い灰となる。

ペル・ロス帝国の最大の痛みであり、恥部でもある黒い聖戦。
その戦争の終盤で一時は英雄に、今では混沌に堕ちた者の物語を伝えつつ 聖戦の痛みを歌に込めて後世に長く残そう。

ーその昔、「黒い聖戦」で生き残ったある吟遊詩人の詩

混沌のオズマ(CV:山口令悟)

闇の中で囁くような声を聴いた。
それはこの世への怒りを示すわめきであり、怨恨に満ちた嘆きでもあった。
混沌がこの世を蝕むと思うか。
混沌が不浄を招いて善良な者を蝕み、世界を混乱に陥れると思うか。

それが自分の声だったと思うならば、そう思うがいい。
頭の中の不浄を囁くこと、見てはならないものを見せること、それが本当に混沌の仕業だと思うならばそう受け止めるがいい。
それはお前たちの中にとぐろを巻く誤った真実の蛇であり、
否定したい内面のこだまはお前たちが吐き出した断末魔なのだ。

隠したい真実と否定したい声が聞こえて苦しいならば、
そう、私のせいだと言ってもいい。
それで世界が暴かれ、お前たちの愚かさが明らかになるのならば、
私が自ら膿んだ傷の中のそれを取り出し、お前たちに見せてやろう。

私はただその方向の定まらない世界の羅針盤であり、先に放たれた矢であるのみ。
矢を一本打ち返したとしても、その後に降り注ぐ矢の雨を防ぐことはできないだろう。
私をつがえた弓を引いたのは怨恨だったが、私が引き裂くのは裏返った世界の空なのだ。

括りつける鎖よ、混沌はすでに鎖で括りつけるにはあまりにも大きくなりすぎてしまった。
目の眩む光よ、私の両目はすでに光の中の闇を見つけた。

見よ。
私が何もしなくとも混沌の時は訪れ、
とうとう彼らは私の前に辿り着いたのだ…。
これは予見されていたことだと、最初から分かっていた。
その真実のままならばこの殻は壊れるだろうが、殻を壊して芽生えた混沌は永遠だろう。

ただ、残念なのは…
冥界で待っているであろう彼に二度と会えないこと。
だが、後悔はない。
これが私の決めた、私と世界の終幕なのだから…。

消滅の神 カザン(CV:濱本大史)

生涯を閉じた者たちが訪れる世界では赤い月だけが私を照らし、
信念と誓いのために力を尽くしてきた私の使命は、業となって私を踏みにじる。

九の鬼神試練が足かせとなって私の足を引き留めるが…

それでも…。
その試練を後にしてでも君を止めなければならない。

試練の時間が遅れるほど、私の影に課される罪の重さは増すが
憎悪によって全てを投げ捨てた親友の末路を、黙って見ているわけにはいかなかったから。

帝国に向けた憎悪は私もまた断たれた腱が沸き立つほど
止まってしまった心臓が泣き叫ぶほどにはっきりと残っているが。
愛する者とその者を見つめることのできた両目を失った君の心臓ほどではないだろう。

いっそ私が全てを背負って終わらせていれば…
失うものの無い私が全てを背負って逝っていれば…

彼女のささやきに揺れる君を見ながら、全てが私の罪のように感じていた。
空っぽになった魂だけが残る君が、その魂すら投げ捨てようとしているのを見ていられなかった。
いっそ私の魂を燃やしてでも、君だけは無事でいてほしかったのに…
すでに生の全ての業を背負ってここに呼ばれた私には、君の足を引き留めることしかできなかった。

そして、その日が来てしまう。
世界に何度も警告してきた、来ないことを祈っていたその瞬間が。

冥界から赤い月が消えた日、私もまた月と共にここに辿り着き、
鈍くなり、ぼやけていた帝国への怒りが、肉体に刻まれたかのように燃え上がった。

いっそこれで良かったのかもしれない。
君はそこで見守っていてくれ。 君の業は全て私が背負おう。

あの日の記憶のように赤く流れる空の下で
あの日の後悔を繰り返さぬよう、この手で全てを始末する。

そして、その後に全ての罪を背負って行こう。
冥界に私が呼ばれるまで…。

黒い恐怖のアスタロス(CV:桜木可奈子)

出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、聖者の真実を光の奴隷たちに知らせました。
彼らの喪失と分裂をしっかりと見届け、恥部を隠そうとする欺瞞もまた、見届けました。
それにより苦悩し、悪に堕ち、堕落した者たちを導きました。

出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、あなたの教団を用意しました。

人気の少ない路地で死にかけていた少女に生を与え、
少女はあなたを説破する啓示者となりました。

聖者の矛盾に気付き、苦悩に陥っていた光の奴隷はついに光に背を向け、
破滅の選択を受けて使命を果たし、死を迎えました。

絶望の中で暮らしていた少年は、些細な動機を与えただけで黒く染まり、
すぐに絶望の選択を受け入れて誰よりも忠実な犬となりました。

自らを救済者と思い込む傲慢な光の奴隷は自ら堕落の道へと進み、
果てしない欲望でついに破滅を手にしました。

分裂した光の奴隷たち、家族を失って堕ちた者たちに新たな翼を与え、
その翼は多くの光の奴隷を屠りました。

出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、全ての用意が整いました。
世界を再び混沌に染める準備が整っています。

出でよ、混沌よ。

暴かれた破滅のベリアス(CV:ロバート・ウォーターマン)

大気に満ちた混沌の気運を全身で感じ、
べリアスは深く息を吸い込んだ。

爽快な気分と共に全身に満ち溢れる力は、数百年前の過去へと彼を導いた。
破滅の平原と呼ばれていたそこで、常に先方に立って偽装者部隊を率い、
敵軍を蹂躙していた記憶が、今も鮮やかに思い浮かぶ。

混乱した戦場で立ちふさがった生意気なプリーストどもの顔も、一つ一つはっきりと憶えていた。
その傲慢な表情のほとんどは大剣で叩き潰したが…
結局、この上なく有利だった戦争の結末は衝撃的な敗北だった。

"…ミカエラ。"

唸るように吐き捨てた声に、殺伐とした敵意と恐れが滲んでいた。
偽装者たちに致命的な神聖力でプリーストを結集させた、聖眼の少年。
十字架が一つ黒き大地の片隅に残り、偽装者軍団の進軍を阻止してはいるが、
ミカエラはもうその戦場にはいない。

べリアスの歩みが止まった場所は、グレドン平原の中心部だった。
彼が復活する際には迎えに来ているべき殉血者は行方が分からなかったが、
数多くの戦闘を共にした一台の古い戦車は、変わらぬ姿で主を待っていた。

"クフフ…もう一度一緒に暴れようではないか。"

混沌の再臨は迫っており、今度こそ敗北することは無いだろう。
間もなく繰り広げられる殺戮によって流された血で喉を潤すことを考えると、気持ちが軽くなる。
過去の力を取り戻した破滅の口元に、期待に満ちた微笑みが浮かんだ。

迫り来る絶望のティアマット(CV:景浦大輔)

地獄馬の嘶きが黒き大地に響き渡った。
絶望の騎士を乗せた馬は、蹄の音も立てずに影で覆われた地を横切った。
数百年にわたる忍苦の時間の末に戻ってきた黒き大地は、四方に混沌の気運を漂わせていた。

"......"

迫り来る戦闘直前の静けさを感じたティアマットが地獄馬を止めた。
敵意に満ちた心は、すぐにでも敵に襲い掛かり血祭りにあげることを望んでいたが、
冷たい理性が彼を引き留めた。

すでに一度槍をぶつけたことのある敵の実力は相当なもので
強い敵と戦うにはいつも十分な準備が必要だったからだ。
彼は眉間にしわを寄せながら迫る敵の様子をうかがった。
予想通り、忌々しい神聖力の中には混沌の気運を持つ者たちが混ざっていた。

"トロッカ。"

ティアマットに呼ばれ、いつの間にか現れた妙齢の女性が応えた。

"お呼びでしょうか、絶望よ。"

"敵の中に混沌の力を持つ者がいるか、調べろ。
貧弱な精神を搔き乱すお前の能力ならば、彼らの抑えている混沌の声を目覚めさせるのは簡単だろう。"

深く首を垂れたトロッカが姿を消すと、
ティアマットは地獄馬のたてがみを撫でてその気運を回収し、マントの形にして身にまとった。
今回の戦闘で、彼は混沌の再臨のためにあらゆる手段を駆使するつもりだった。

"来るがいい。今度こそ逃れられない絶望に陥れてやろう。"

ティアマットが無意識に放った気運が
周辺に渦巻く影の闇をさらに深くする。
同じ敵に敗北するのは一度のみ。

混沌を欲する半夜(CV:坂泰斗)

"うるさいですね。"

低くつぶやいて四凶獣の気運を引き上げると、頭の中に響いていた声が次第に小さくなっていった。
彼は満足げな表情で周辺の風景を見渡す。

混沌の王座のすぐ横に位置する、鏡の庭園。
「アルミス」と呼ばれるここは、クリスタルで作られた鏡でいっぱいだった。
半夜は歩みを緩めて、鏡に映った自分の姿を凝視した。
殉血者の力を吸収した後に変化した、彼の姿の上に混沌の影が色濃く差していた。

"私は混沌の手下ではなく、極楽浄土の主になるつもりです。"

半夜は吐き出した言葉に力を与えるように、拳を強く握りしめた。
たった一つの目的のために破門も恐れず、世間の非難にも耐えてきた彼だった。
長い忍苦の時間と紆余曲折の末に掴んだチャンスを、彼は徹底的に自分の信念のために利用するつもりだった。

吸収した破滅と絶望の力を全て自分のものとするには
オズマの内面とも言えるそこで、彼の自我を完全に理解する作業が必要だった。
もちろん、その過程で意志を失えば混沌の手下になるしかないが…

"不必要なものは斬り捨て、必要なものだけをもう一度集めればいい。"

半夜は断ち切るように首を振り、否定的な考えを振り払った。
辛いからといって、ここまで来て成し遂げたものを諦めるつもりはない。
そろそろ終幕が見えてきたこの聖戦が終わるころには、彼はこれまでとは次元の異なる存在となる予定だった。

"この身を犠牲にしてでも…"

自分の信条を思い起こしながら、彼はまた混沌の内面へと意識を集中し始めた。

混沌の啓示者 コーリング・ジェイド(CV:酒井美沙乃)

ある女性が、塔を登っていた。
一時はエレリノンの眼であり、知識の象徴とも呼ばれた塔。
塔の頂上に辿り着くと、そこにはエレリノンを一望する景色が広がっていた。

"ああ…あなたの栄光が輝く地に足を踏み入れました。"

だが、女性が感傷に浸ったのはその一瞬だけだった。
荒々しい摩擦音と共に、地震でも起きたように塔がぐらぐらと揺れた。
空に、大地に、目の前の全てに影が落ちる。
世界を覆うほどの巨大なムカデが、塔に巻きつくように登ってきた。
そしてついに、ムカデはその巨大な頭を女性の目の前に現した。

ズリリリリ

ムカデの鱗がぶつかり合い、毛の逆立つような音をだした。
誰もがその姿と大きさに慄き、逃げ出しそうなものだったが
女性は恍惚の表情でムカデを見上げていた。
しばらく女性を見定めるように見つめていたムカデは、静かに巨大な頭を女性の前へ寄せた。
その行動が意味することは、女性にとってはあまりにも喜ばしいことだった。
女性はムカデに向かって静かに歩み寄る。

"これが…最初の偽装者、エムフェルヌア…!
混沌よ、あなたの啓示を受け止めました。"

この上なく濃い混沌の気運が、彼女を覆った。
一歩踏み出すたびに、体を覆っていたぶ厚い塊が嘘のように剥がれ落ちていく。
一歩、また一歩…新しく生まれ変わるのを感じ、
ついに完全な羽化を終えた女性は、ゆっくりとムカデの頭に上り立った。
女性を乗せたムカデは、塔の頂点まで体を巻き付ける。
混沌に染まった美しい光景が、再び目の前に広がった。

"混沌の啓示者として、この世の全ての者たちにあなたの啓示を聞かせましょう。"

ムカデの咆哮が黒き大地に響き渡った。

追って来るドラウグ&いたずらフリーグ(CV:小野涼子)

見てよ、ドラウグ!
お前の好きなおやつがこんなにたくさんあるよ!

待て待て、落ち着けって!
久しぶりにやっと見つけた人間だぞ、
腹が減ってるからって一気に食べたら、またしばらく後悔することになる。

じゃあ、どうするのかって?心配するなよ!
飽きるまでおもちゃにして遊んでから、空腹に耐えられなくなったら餌にしてやるからさ。
だろ?お前もそう思うよな?

ラララ~、じゃあ、まずどうやって遊ぼうか?
そこのお前!ボール遊びは好きか?それとも楽しい鬼ごっこ?
手足を一本ずつ弾けさせるバンバンごっこはどう?

フフフ、そんな怯えた表情するなよ。
おやつタイムは最後に取っておくからさ!

でも、お前の後ろにいる
その怪我した仲間にドラウグが食いつかないようにするには
俺たちを飽きさせないように遊んでくれないとな。

混沌に従うデスフェロ(CV:坂泰斗)

いっそう熱くなった悪魔の血が、全身の細胞を沸き立たせる。
混沌の再臨が間もないことを直感したデスフェロは、狂ったように笑いながら
フィリス大通りの地面で息絶えた敵の遺体を無造作に投げた。

黒き大地に拡がる混沌の気運を深く吸い込むほど
額の角は堅くなり、全身にそれまでになかった新たな力が湧き上がってくる。
黒き大地に足を踏み入れた不遜な者どもを、一人残らず惨殺できそうな気分だった。

自信に満ちた状態だったが、デスフェロは自分に与えられた任務を忘れてはいなかった。
混沌の再臨のために、虫けらを踏みにじるよりもずっと重要な使命があったのだ。

まずは果てしなく長い眠りについた消滅の神を目覚めさせなければ。
無理やり眠りから呼び戻された消滅の力は、憤怒をぶつける対象を探すはず。
自分が身を隠していれば、自然と冒険者どもに襲い掛かるだろう。

朽ちた封印は内外から同時に加わる混沌の圧力に耐えられないから
アラドには再び混沌が降臨することになるはずだ。
そしてその次は…

デスフェロは頭を振って考えを振り払った。
次?次など無い。
暗黒3騎士の力を宿す器として黒い教団に身を捧げた瞬間から
彼が望むのは、この世界の完全なる滅亡だった。

"混沌の下僕があなたの意志に従います。"

彼はもはや、絶望の騎士に属する従者ではなかった。
世界の破滅を心から信じ、それを望む混沌に従う者。
デスフェロ。

将軍カレリン(CV:綿貫竜之介)

襟の隙間から入り込む雪山の寒さは過酷だった。
絶え間なく視野を遮る吹雪のせいで、
丘の下に落とした松葉杖は真っ白な雪原の中に沈んでしまった。

"吹雪の音がまるで人々の歓声のようだと思いませんか?
ずっと聞いている大将軍と一緒に凱旋行進の戦闘に立った時を思い出します。"

雪山の頂上。
近いはずの太陽ですら溶かすことのできない万年雪の上で
両足の腱を全て抜かれた男が、誰かの死体の前で座り込んでいた。
彼が抱きしめている死体も、両腕の腱が全て抜かれていた。

"あの頃は、国のために戦うことだけが全てだと思っていました。
いつも自ら先鋒に立ち、戦闘後に飲む一杯の酒で全ての痛みや不安を吹き飛ばしましたね。"

しばらく言葉を止めた男の豪快な笑い声が、吹雪を貫いて響き渡った。
蒼白になった顔とは違って、まだ力に満ちた声だった。
幸せな記憶を反芻しているのか、男の目にしばし生気が戻る。

"あんなに忠誠を捧げたのに…その結果を見てください。
失ったのは家族と両足の腱、得たものは大将軍の冷たい死体だけです。
でも、最後に大将軍にこうしてお会いできたのが不幸中の幸いかもしれませんね…。うぅぅっ…"

激昂した感情で吐き出した呼吸と涙は、雪山の寒さにそのまま凍り付いてしまった。
男の髭が、次第に青い光を帯び始める。彼は少しずつ呼吸が煩わしくなっていくのを感じた。
生の最後が迫っていることを直感した男の顔に、凄然とした微笑みが浮かぶ。

"ふぅ…もしも…もしもですけど。
あの世という場所があって、もう一度機会が与えられるならば…"

力なく続く男の呼吸が、ついに絶えた。
男の声はもう聞こえなかったが、
吹雪の中で、彼が言おうとした言葉がこだまのように聞こえた気がした。

あの世でも大将軍を追って、戦場の先鋒に立ちましょう。

副官レオニット(CV:広瀬裕也)

短剣を持つ手が震えた。恐れのせいではない。
戦友たちを死地に追いやったという罪悪感と長い謹慎生活は
戦場を渡り歩いた若い副官の肉体を、短剣一本まともに握れないほどに弱らせた。

彼は静かに短剣の刃を見つめる。
カザンの死後、悪夢のように続いた現実から逃れられると思うと、せいせいする。
咳のように弾け出る血液を飲み込みながら、彼はもう一度服装を整えた。

"カレリン将軍…そして、大将軍。"

爵位を返上して廃人になり、生気を失っていた彼を目覚めさせたのは、大将軍カザンが追放されたという報せだった。
両腕の腱を絶たれ、追放者の山脈に追われた罪人が生きて戻ったことは一度もなかったので、
人々はある瞬間からカザンの死を既成事実化させて公然と語っていた。

"この愚かな副官を絶対に許さないでください。
いくら皇帝の計略に騙されたとはいえ、私は裏切り者です。"

跪いたレオニットの前に、副官職に就いた日にカザンから贈られた剣とカレリンに貰った盾、
そして彼が常に戦場に持ち歩いていた魔法書が並べられていた。
どれも三人の結束を象徴すると思って、彼がいつも大事にしていた物だった。

"たとえ…肉体はこの首都に幽閉されていますが、心だけはあなた方と共にあります。
どうか、哀れなこの魂だけでもお連れください。"

贖罪するように前に倒れた彼の肉体から、苦し気なうめき声が漏れた。
床を流れる鮮血が剣と盾、魔法書を順に濡らす。
吐き出した血で汚れたレオニットの口元に、寂し気な微笑みが浮かんだ。

生の最後の瞬間、
いつの間にか開かれた冥界の門の隙間から、誰かが自分を見つめていることに彼は気付かなかった。

切り開くスカルペル(CV:濱本大史)

スカルペルは特別だった。

混沌の気運を大して放つことができなかった頃から
彼は刃物で刺されても斬られても苦痛を感じず
体に生えた四本の腕で多くの敵を引き裂くことができた。

戦場で戦いに集中していると、
彼の体にはいつの間にか数えきれないほどの刃物が刺さっていることもあったが、
その刃物はそのままスカルペルに握られて彼の武器となった。

人々は暗黒3騎士の強力な力を恐れたが、
実際の戦場で彼らに劣らず敵を屠ったのはスカルペルの刃だった。
斬り捨てた敵の魂が数百を超えると、周囲に漂って彼を煩わせたので
ある時から彼は怨魂を閉じ込めるための棺を背負うようになった。

荒廃した彼の内面は人間だったころの記憶をぼやけさせたが、
スカルペルは本来の自分もそう善良ではなかったのだろうと思った。

怨魂たちの泣き声が漏れ聞こえる棺を背負い
押し寄せる敵の斬撃を体で受け止めながら
相手を斬り捨てる感覚は、いつも彼に大きな喜悦を与えたから…

浸透者 トロッカ(CV:三上由理恵)

シィ~シィィ~
目覚めないで。ここは甘い夢の中。
一日中ぶつかり合う武器の音も
絶え間なく押し寄せる偽装者も、実は全て幻。

シィ~シィィ~
偽装者と化して殴り殺された夫も
私を柱に縛り付けて逃げた、街の人々も
夢から覚めれば泡のように消えるだけ。

シィ~シィィ~
すでに起きた残忍な出来事は全て夢の中に葬り
常に考え続けていたあらゆる悪行も、全てここに解き放って行きなさい。

混沌が一度世界を覆い尽くして去ったら
悲しかった夢から目覚め、スッキリとした朝を迎えればいいの。

シィ~シィィ~
だから、目覚めないで。ここは甘い夢の中。
皆が一緒にこの夢の終わりを見るまでは。

ー偽装者が発生した兵営で夜通し聞こえた歌声

混沌に浸食された K(CV:小林康介)

黒き大地には長い時間が流れたが、あの時の熾烈な戦いの痕跡はそのまま残っていた。
目の前に見える一体の遺骸に近寄る。
長い時間が流れたせいで原型は留めていなかったが、間違いなく幼い子供だろう。

"......"

これが我々のした事の結果なのか?
長い時間怒りに満ちていた自分の信念には、一筋の疑いすらなかった。
だが、小さな疑いが芽生えた瞬間、その疑いは果てしないほどに膨れ上がり始めた。
私はあの者の言う通り、すでに答えを知っていたのか?
私の神だと思った者の言葉を押して新たな混乱を与えた者は、本当に私が答えを知っていると思ったのだろうか?
あの日から、胸の片隅に怒りに満ちた心の隙間から、どんどん入り込み始めた。
ならば、私が今までしてきたことは…また別の私を作っただけだったのか?

「何を疑っているのだ?」

頭の中であの方の声が聞こえた瞬間、抗えない強大な力を感じて跪いた。
全身を潰すような力は絶対的な命令のようで、決して抗うことのできないものだった。

「欺瞞に満ちた者どもを引きずり下ろす日が迫っているというのに、その些細な欺瞞に心が揺れているようだな」
"混沌よ、私は大切なものを守りたかっただけなのです。ですが、私のしたことは…"

足元の黒き大地から、あの方の気運が立ち昇るのを感じた。
そして、包み込むような混沌の力が、私を浸食し始める。

「疑いを捨てて、ただ守るがいい」
"何をですか?"

「お前の大切なものを」
"どうやって?"

「大切なものを失わせた者たちを、一人残らず破滅させることで」

目の前に一瞬見えた気がした光は、次第に満ちてくる混沌の気運に浸食され、消え去った。

狂気の闇 ゼト(CV:小船彰人)

闇の中に潜む者よ。
今お前に必要なものは何だと思う?

仲間と協力する心?
先を見通す慧眼?
なぜ敗れたのかを分析する緻密さ?

違う。
それはお前に必要なものではない。
そんなものは、平凡な者どもにこそ必要なだけ。

闇の中に潜む者よ。
特別なお前に必要なものはただ一つ。
目の前の敵を破滅させる強い力。
そして、さらに強烈な…

"き…狂気…"

そうだ。よく分かっているな。
この黒き大地に宿る私の力が、お前をさらに強くしてくれるのを感じるだろう?
お前の持つ狂気こそが、混沌を最も上手く受け止める器となるのだ。
この混沌の全てを。

"クフ、ウフフフフ…クハハハハッ!"

そう、それでいい。
色褪せたお前の闇は、ついに混沌の狂気に染まり始めたのだ…。
思う存分、暴れるがいい!

狂気に満ちた、闇よ。

混沌の邪神 ヴェンタ(CV:ロバート・ウォーターマン)

黒き大地に足を踏み入れた時、
ヴェンタはオズマの視線が自分に向けられているのを感じた。

"…!?"

大地に満ちた混沌の気運が、彼に注目していた。
盟血者の血で肉体を燃やしてから、初めて彼は隠れる場所がないのを感じた。
あれほど居心地のよかった道の上の影さえ、彼の隠れ処にはならなかった。

変化は混乱に満ちた想念が落ち着く間もなく訪れる。
彼の内面をそこまで暴いたオズマの視線が離れると
ようやく満足したように混沌の気運が彼の胸に集まり始めた。
一瞬戸惑ったヴェンタは、すぐにその意図を悟って嬉しそうに声を上げる。

"出でよ、混沌よ!
卑しい身ですが、あなたの目になりましょう!"

胸に集まった混沌の気運は、徐々に目の形になっていく。
永劫のように感じた刹那の時間が過ぎてついにその目が開かれた瞬間、
ヴェンタは黒き大地のあらゆる場所を見ることができ、
オズマは彼を通じて閉ざされていた目を開くことができた。

お前はもう、卑しい存在ではない。

どこかから聞こえた声を聞いた時、
ヴェンタは自分が新たな存在として生まれ変わったことを知った。
敵を死という安息地へ導き
味方には偉大なるあの方の意志を伝える混沌の邪神として。

混沌が沈んだ大地

聖者の地

ミカエラはオズマと数多の時間、戦闘を繰り返していた。
今はなぜかミカエラは姿を消し、彼が使っていた十字架だけが寂しく残されている。

啓示の塔 エリノス

その昔、ペル・ロス帝国の栄光と呼ばれた都市、エレリノン。
エレリノンの繁栄の象徴であり、知識の象徴だったこの塔は、オズマの手下であり最初の偽装者であるエムフェルヌアが占拠している。
栄光の塔とされていたエリノスも今やオズマの啓示を伝える啓示の塔と呼ばれるようになった。

恐怖の聖地、グラウベン

繁栄の都市・エレリノンの郊外にある街で、富裕層の商人や貴族が暮らしていた。
黒い聖戦勃発後、偽装者軍団に抵抗したが、街に潜入したアスタロスによって内部に偽装者が発生し、崩壊する。
聖なる5人の一人であるシャピロ・グラシアが恐怖のアスタロスを撃破した場所でもある。

永遠に燃える渓谷、エルトフェル

ペル・ロス帝国の繁栄の都市エレリノンが建てられたミナス平原にある美しい渓谷。
黒い聖戦勃発後は荒廃し、水の代わりに血が流れるほど凄惨な激戦地となる。
最初に聖火を発現させたラミエール・レッドメインが地形を利用し、単身で数百の偽装者を燃やして戦死した場所でもある。

殉教者の礼拝堂

元々はエレリノンの外郭に位置する、小さな名もなき礼拝堂だった。
黒い聖戦当時、ここでは数多くのプリーストたちが暗黒3騎士と偽装者に命を奪われた。

赤い楽園の祭壇

その昔、ペル・ロス帝国が祀っていた光の神の祭壇で、今は廃墟となり果てている。
以前は神聖視されていたここは、暗黒3騎士によって消滅復活の儀式が行われた場所でもある。

安息の墓

残酷だった黒い聖戦当時、死者たちを弔うことすらできなかった帝国民たちは、
オズマと偽装者たちを避けて外郭へ逃げながらも、死者たちのために急ごしらえの墓を残した。

混沌の門の内側

混沌の門をくぐって中に入った時、一番先に足を踏み入れることになる場所。
遠くにペル・ロス帝国の栄光と呼ばれた、今はオズマが封印されているエレリノン城が見える。

亡者の回廊

本来は聖地へと向かう「懺悔の道」と呼ばれる回廊が長く延びる場所だったが、今は回廊の残骸だけが残されている。
偽装者たちが跋扈する偽装者たちの回廊となり果てたここでは、帝国民だった偽装者たちが今も獲物を求めてうろついている。

破滅の平原 グラードン

元々はグラードン平原と呼ばれ、色鮮やかな花が咲くことで有名な名所だった。
だが、黒い聖戦勃発後は荒廃した地に変貌し、赤い血に染まった破滅の平原と呼ばれるようになる。
黒い聖戦当時、ボルフガント・ベオナールが自分の弟であるベアフォルドを殺したティアマットの片角を折った場所でもある。

絶望の揺りかご、アベントゥス

本来は物資輸送に使われたフィリス大通りの中間地点に位置する小さな街で、
エレリノン城へと向かう商人や冒険者たちが旅の疲れを癒したのどかな場所だったが、
黒い聖戦で無残に敗れてからは絶望に満ちた亡者の街になってしまった。

絶望の道、フィリス

元の地名はペル・ロス帝国の栄えた都市であるエレリノンに向かうフィリス大通り。
多くの物資が行きかう重要なルートだったが、黒い聖戦が勃発した後は偽装者が進軍するための道として使われている。

悲嘆の沼、セルハ

大都市エレリノンと近隣の街アベントゥスの飲用水としても使われるほど清く澄んだ湖だったが、
黒い聖戦当時に多くの人間と偽装者の死体が沈んでからは、苔むして植物は腐り果て、ドロドロした沼となってしまった。
多くの命が湖に沈んで溶け込み、今では悲嘆の沼と呼ばれている。

沈黙の森、ルーネン

一時は妖精の森と呼ばれるほどに美しかった場所で、帝国民に語り継がれる説話にもよく登場する。
朝の森・ルーネンと呼ばれたその美しい森には、「ルーネン」という美しい妖精が暮らしていたとされているが
今は暗くてじめじめした死の臭いが漂う森となってしまった。

エレリノンの関門

大都市「エレリノン」へつづくフィリス大通りにつながる関門で
かつては「栄光の橋」と呼ばれた長い橋を渡ると、エレリノン城に入る出入り口が見える。

悲劇の都市、エレリノン

その昔、ペル・ロス帝国で最も栄えていた都市の城で、混沌の神オズマと偽装者軍団が一番最初に攻撃した地域。
たった一日で陥落し、住民たちは命を落とすか血の呪いで偽装者になったという。

鏡の庭園、アルミス

一時はエレリノンの富の象徴とされていたが、今では都市の没落と共に混沌の気運による幻影で満たされてしまった場所。
その最奥にはオズマが隠したがっている何かがあるとも言われている。

混沌の王座

エレリノン城の最も高い場所に位置するここは、
オズマが偽装者軍団と共に城を陥落し、自らの王座を据えて黒い聖戦を指揮した場所だ。
「実体のない富と栄光を追い求める弱さの象徴は、打ち壊すべきではないか?」 ーオズマ

消えた聖者

私は消滅するが、種は残る。
残酷な運命の中に残された小さな片鱗…
これから我らはあらゆる場所、あらゆる時間に存在するのだ。
何としてでもこの嵐を遡ってみせる。
過去の彼らにあの女の計画を知らせなければ。
この全ての最後の手段は運命を覆すためのもの…
もう同じ未来は来ないだろう。

嵐の風に乗った種は、ふわふわと流れて別の次元のある大地に辿り着いた。
確かな目標を持つかのように、種はためらうことなく大地の上を漂い、ついに探し求めていた男の耳に潜り込む。

ススス-

身の毛がよだつような蛇の声が、男の耳の中で響いた。すると男は突然の声に驚く素振りすら見せず、静かに顔を上げた。
言葉を終えた種は、一瞬女性の姿を象ってからスーッと消えていった。

"…そうですか。"

種がどうやって封印の中に入って来たのかも、その言葉の真偽もどうでもいい。
種に宿る徹底的なほどの悪意に満ちた復讐心、なによりも自分と同質の何かが、種が真実であることを代弁していた。

"これまで彼女の計画が実行されなかったのは…"

男は立ち上がって白いフードを脱いだ。
そして、遠くに見える城の頂上、鎖で縛られたまま王座に座るある男を見つめた。
男の手からひときわ明るい気運が立ち昇る。

"そろそろ発たなければなりませんね。"

自分の十字架を握りしめた男が、その十字架を地面に突き立てた。
男の気運が十字架に乗って広がり、一瞬で荒廃していた大地が緑に染まった。
それでも十字架は男の気運を宿して明るく輝いている。
周辺の呪われた大地に比べると、かなり異質な風景が現れた。
男はそのまま振り返り、迷いのない歩を進めた。

"私に捨てられた我が神、レミディオスよ。私にできなかった…混沌を消滅させる者たちを護りたまえ。"