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Season12 千海天:新たな跳躍

シナリオ

ストーリー

シノプシス

我々の世界を守る力とは、何か。
偉大な英雄?強力な文明の力?それとも…全能の神?
間違いとは言えないが、完全に正しいとも言えない。
私もまず最初に、そういったものを求めたのだから。

しかし千年を超える時間の中で旅をしながら、感じたことがある。
先に述べたあの巨大な柱たちが世界を支えていることは確かだが、
その柱は、決してひとりでに立っているのではなかったということを。
その柱の下には、今この瞬間にも数多くの者たちがいる。

人。名前すら残らなかったその数多くの人々は、
試練によって英雄となり、
犠牲によって文明を築き、
信仰によって神を生み出す。

時には互いに信頼し、協力し合い。
時には互いに不信を抱き、対立し合い。
そうして流した汗と血で積み上げた堅固な基盤が、
まさに今、我々が立っているこの世界だ。

私はただ。
我々が積み上げてきた世界という城に、レンガを一つ加えたいだけだ。
我々が立つ世界が崩れないのなら。
それで十分だ。

モンスターストーリー

星座亀大書庫

潔白のペッカートル

少年は死にかけていた。
少年の幼い肺は、もはや空気を受け入れられないのか、細い喉から軋むような掠れた息がかろうじて漏れ出ていた。
仙界の根幹とも言える霧の魔力。
その魔力に拒絶反応がある体質は、仙界では空気に拒絶反応があるのと同じことだった。

「ペッカートル。これをつければ少しはましになるだろう。」

スクリボンは急いで作った呼吸器を取り付けてやった。
霧の魔力で動くミストギア、しかし同時に呼吸の際に霧の魔力を濾過する装置でもあった。
この世界の力は少年を脅かす毒となり、また少年を救う希望ともなる。
その笑えない矛盾に、スクリボンは苦笑いを浮かべた。

「はあっ…はあっ…」

精密に霧の魔力を除去しなければならない装置のため、濾過される空気量はあまりにも不十分だったが、
ペッカートルの呼吸は少しばかり落ち着いた。
少なくとも、肺が縮み上がるように締め付けられる苦痛だけは和らいだことだろう。

「ス…スクリボン…おじさん…」
「言ってみるがよい。」
「妹は…」

ペッカートルはそれ以上言えず、苦しそうに顔を横へ向けた。
彼の視線の先には、身を丸めて眠る赤い髪の少女がいた。
少女の呼吸は、まだ大丈夫そうだった。

「今はまだ…」

スクリボンがうなずくのを見たペッカートルの、懸命に笑おうとする声が呼吸器から漏れ出た。

「ピウさえ大丈夫なら…僕も大丈夫です。」

ペッカートルはピウの頭にそっと手を添えた。

「この苦しみから抜け出す方法が…ありますよね?」

ペッカートルの視線は動かず、スクリボンに固定されていた。

「神は…間違えて、僕たちに罰を与えてしまったのですよね?」

スクリボンはその方法を探すために努力するだろうが、今すぐできることは何もなかった。
それでもなお今はただうなずいてやるしかなかった。

「そうだ。お前たちは…罪人ではない。罰を受ける理由などない。」

ペッカートルは安堵した目で、いつ途絶えるかわからない希望を抱き、小さく息を吐いた。

高貴なヴィーリス

真っ白な紙は、それ自体で気高い。
まだいかなる手も触れていない、清らかな余白。
しかしほんの小さな黒い染み一つが落ちただけで、その紙はもはや最初の気高い紙ではない。
こすり、塗り重ね、引き裂いても…
一度汚れた紙は、気高さを取り戻すことができない。

「ヴィーリス…いったい…なぜ…そんなことを?」

そして人間の過ちは、その黒い染みと同じだ。
記憶という白い紙の上に刻まれた過ちという染みは、決して消えることがない。
誰かがその過ちを覚えている限り、二度と最初に戻ることはできない。

「私を覚えていそうな者は、すべて殺した。」

ヴィーリスは注射器に薬物を入れながら言った。
まるでずっと前にすでに結論を出した話を、改めて確認しようとするかのようだった。

「そして…お前が最後だ。」

男の見開いた目から、じわじわと力が抜けていく。
おそらく苦痛はなかっただろう。
苦痛が必要な者は別にいたのだから。
マイア。そして彼に従う者たち。

「あとは…星座亀大書庫の記憶を消すだけ。」

その記憶を持つ者は、ヴィーリス自身しか残っていなかった。
しかし彼女の最後の目標は、人ではなかった。

「あそこに保管された記憶さえ消せば…」

ヴィーリスはふらふらと身を起こした。
彼女の顔に、悲しみなのか、諦めなのか、狂気なのか区別のつかない微笑みが浮かんだ。

「また…」

そして止めることのできない囁きが漏れ出た。

「…真っ白になれる。」

沈黙のカラ

巨大な黒い鎌の下に、人々が倒れていた。
彼らを見下ろしていた女は、顔に飛んだ血を手の甲で拭った。
そして鎌を持ち上げ、地面に縦一文字の線を引いた。

「白海。霧ノ神と目覚めた森が危うくなり、アンチエンバイが不安定になっています。」
「重泉。乱脈の地の妖怪たちと、使徒と呼ばれるディレジエとの戦いで、霧ノ神を含む戦力の大半を失いました。」
「千海天。終末の力を受け入れたヴァニタスの蜂起。最後の聖地と星座亀大書庫を除く全ての場所を占領されました。」

三つの地、そして例外なく彼らは崩れ落ちた。
冒険者と呼ばれる者がいなければ、彼らには一筋の希望もなかっただろう。

「しかしマイアは…いまだに現れていません。」

隠者マイアは、いったい何を見つめているのだろうか?
彼に計画がないとすれば、彼らを信じて待つ空の塔の魔法使いたちとランドキーパーの崇高な義務は無意味となり、
彼に計画があるとすれば、彼らを信じて待つ者たちの全ての犠牲を受け入れたということになる。
彼は仙界のために動いているのではないのだろうか?

「理解できますか?」

彼女の問いかけにも、死んだ者たちの口は動かなかった。
鎌が虚空を切り裂いて振り下ろされた。
刃先は地面を引っ掻き、乱れた線を残した。
もしかしたら。
はじめからヴァニタスという脅威など、彼の眼中にはなかったのではないだろうか?
それともヴァニタスさえも、彼の計算の内に入っていたのだろうか?
誰かが話してくれたなら…
誰かが答えを教えてくれたなら…

制御できないファビア

やめろ。お前がしようとしていることは、もう諦めろ。
それはやり過ぎだ。度が過ぎる。

「やってみもしないで、一体何を言っているんだ?」

世の中には規格と基準というものがある。
なぜいつも自分勝手なことをするんだ?

「ならその規格とやらは、誰が勝手に決めたんだ?」

機械の時代を切り開いた人々だ。
まさか…それが間違っていると思っているわけじゃないだろうな?

「やってみもしないで、間違っているか正しいかどうやってわかるんだ!」

そうしないのには、それなりの理由があるんだ。
ここの基準に合わせられないなら…ここを去れ。

「なぜ私が去らなければならないんだ?」

お前は今、自分自身すら制御できていないじゃないか。
それで何の発明をしようというんだ?

「これは…制御できていないわけじゃない。」

違うだと?なら何だ?
お前がしでかしたことを、どう説明できるんだ?

「ただ…お前たちが理解できないだけだ!」

背教者の城

偽りのヴェリディクス

聖人は祭壇の上に立つ。
数百にも及ぶ信徒たちの視線が、まっすぐ彼へと向けられた。

レミディオス様は私たちに光と生命をお与えくださいました。
ゆえに私たちは、その光に従い世界の闇を照らさなければなりません。
私たちの意志で…正義を実現しなければなりません。

群衆の中で、小さなざわめきが起きた。
不安と恐怖、小さな希望、そして重い期待が入り混じったざわめきが。

真理はそれを見る者の目に宿るのだから、
兄弟たちよ、落胆しないでください。
この闇もまた、レミディオス様がお備えになった道の一部です。

彼はもう幾日も眠れずにいた。
彼の祈りは虚ろなこだまとなって返ってくるばかりだった。
神が沈黙していること、あるいはすでに彼らに背を向けてしまったかもしれないことを、彼は誰よりもよく知っていた。
しかし彼は、

レミディオス様は私たちを見捨ててはおられません。
ただより大きな試練を通じて、私たちの信仰が真の光輝として生まれ変わるよう、試されているのです。

その希望の果てで崩れゆく者たちから、背を向けることができなかった。

だから私たちは、最後まで試練に立ち向かい、光輝へ向けた私たちの信仰を証明しなければなりません。
私が先頭に立ち、道を切り開きます。
恐れないでください!

そうして聖人は希望を広めた。
希望という名の、最も甘美な嘘を。

解放されたヴィオレンティア

ヴェリディクス。
本当に長い旅でしたね。
あなたがいなければ、私は使命の入り口で引き返さなければならなかったでしょう。

たった一歩、本当にあと一歩だけ踏み出す心を決めれば…
ようやく、天上ですね。
永遠の安息が、栄光の光が見えます。
あの場所なら、地上のすべての悲しみと永遠に別れを告げられるでしょう。
ためらっているわけではないのです。ただ…

…今になってわかりました。
何が私をあなたに従いここまで歩ませたのか、
何が私の心を縛り付けていたのか。

高いところに立つと、ようやく見えてきます。
温かな天上の光の下でより鮮明に浮かび上がる
この世界の苦しみが。
暗く混乱した地上が、まだ手を差し伸べなければならない傷ついた者たちが。

私にはどうしても、このすべての痛みを見過ごすことができません。
光の道を知った以上、地上の命たちがその道を歩もうとするなら
私はすべてのものを捧げてでも、彼らの苦しみを力の及ぶ限り包み込みます。

見返りのない献身であっても、構いません。
これが私の選んだ光の道であり、
私の解放なのですから。

無関心のカリタ

汚れた鐘楼の階段を伝って漂う埃の匂いと、かすかな錆の臭い。
心地よくもなく不快でもない、今ではただ慣れ親しんだだけの香りを感じながら、カリタは顔を上げた。
背筋の凍るような悲鳴、爪で石を引っ掻く音。
再び四方から終末が押し寄せてくるという予告が鳴り響いていた。

「…面倒なことになったわ。」

言葉が終わりきる前に、おぞましく歪んだ終末の被造物が鐘楼へと飛び込んでくる。
カリタは驚きもせず、退きもしなかった。
次の瞬間、神聖力に包まれた手が揺るぎなく伸び、
鈍い音とともに怪物は鐘楼の下の遥か闇の中へと弾き飛ばされる。

その後も次々と連なって怪物たちが鐘楼へと這い上がってきた。
顎を貫く手刀、腹部に突き刺さる拳、首を折る簡潔な動き。
しかしその中に怒りはなかった。
ただやるべきことをするだけであったから。

「守るって、何なのかしら?」

聞く者も答える者もない問いが、鐘の音の代わりに木霊した。
結論は出なかった。答えは依然としてなかった。
周囲はいつの間にか静まり返っていた。

彼女は何事もなかったかのように再び煙管を取り出し、欄干にもたれかかった。
白く濁った煙が錆びた鐘を越え、光ひとつない暗紫色の空へと散っていくのを、
ひとり立ったまま、しばらく見つめながら。

墜落したクリテス

揺るぎなき秩序のもと、異端を裁け
光輝を否定する者、光輝の意をもって記された経典に従わぬ者、もはや光を信奉する群れの中に存在することはできない
異端の烙印を押し、光輝より追い出してひとり道を歩ませよ

一つ、
生命を奪うことなかれ。

二つ、
悔い改め、悔悟する者までも追い出すことなかれ。

そして三つ、
道に迷い彷徨いながら、再び光輝に目覚めてその懐へ戻ろうとする者
いつでも再び光輝の城に足を踏み入れられるようにせよ。

「…よく従っていますか、クリテス?」

審判官は頷いた。
赤い血のように燃え盛る情熱が両の目を満たしてなお、溢れ出していた。

「ただ一つ、気になることがあります。」
「何ですか?」
「真実を知らず、偽りの異端の道を歩もうとする兄弟には、いかなる判決を下すべきでしょうか?」


真実を教えてあげればよいのです。

「真実…」

ええ、真実を。
全世界を覆う絶対的な終末のもとで、取るに足らない名前をいくら呼んでみたところで幻想に過ぎないという事実を、
偽りの神への盲信が、そのような信仰を抱く者の存在そのものが、拭いようのない罪であることを。

真実を見ることのできない者すべてが異端であるから、
聖書をもって彼らに苦しみの先にある真の終末を示し、
鞭をもって彼らが真実の道を歩むよう追い立てなさい。

そうして、あなたの審判のもと、偽りのすべての異端者たちが真実に辿り着けるように。

逆説の迷宮

確信のバグス

「信念。」
それは人間たちが口癖のように語る言葉だった。
彼らは信念を守るために、喜んで目の前の炎の中へと飛び込み、無数の苦難の末についに望むものを勝ち取った。
バグスはその姿を見て、驚嘆を覚えた。

望まぬ霧との親和性。それによって神獣でも人間でもなくなってしまった中途半端な肉体。
それは彼にとって、どこにも属せないという残酷な宣告も同然だった。

しかし彼は人間たちに希望を見た。自分もまた彼らのように強烈な信念を抱くならば、この先の見えない現実を打開できるのではないかと。
あるいは、根底から変えることができるのではないかと。

そこで彼は人間たちに倣うことを決意した。端正な制服をまとい、優雅で上品な話し方を身につけた。
神獣とは異なる人間たちだけの思考方式を研究し、徹底して彼らのように行動しようと努めた。
そして準備を終えた後、自分の信念と志を同じくするヴァニタスに加わった。

残念ながら、彼らのやり方は必然的に被害と犠牲をもたらした。
しかし彼は意に介さなかった。大業を成し遂げるためには、相応の代価を払わなければならないものだから。
これがすなわち人間たちが耐え忍んでいた「炎」であり、自分が経なければならない「苦難」だと思った。
仙界の不合理な基準が覆される瞬間、多くの者たちがもはや自分のように苦しまずに済むと、疑いなく信じていた。

「私は間違っていない。」

自分と似た傷を持つ仲間たちを見るたびに、その信念は揺るぎない確信へと固まっていった。

「これは皆のために必ずやらねばならないことに過ぎない。」

バグスは自分のすべてを捧げることを決意した。たとえその代価が自分の命であったとしても。
それが、彼の選んだ信念だったから。

「必ず、仙界の基準を変えてみせる。」

呪われたピウ

毎日、届かない呪文のように繰り返した。
私も他の人たちのように普通に歩いて、走り回って、声を上げて笑うことができたなら。
そうであれば毎日悲しみに沈むこともなく、お兄ちゃんが私のせいであんな選択をすることもなかったのに。

「楽になろう、ね?」
「もう痛いのは嫌でしょ?むしろ気持ちよくなるんだってば?」
「ペッカートルに会いに行きたくない?」


薄れゆく意識の中、耳元にまとわりつくヴィーリスの囁きが絶えることはなかった。
最も脆い隙間に入り込み、甘くも危険な勧誘。
お兄ちゃんでさえ最後まで拒みきれず、結局受け入れてしまった、あの不吉な力。

血の気が引いた指先と足先から、感覚が砕けるように散っていった。
肺腑を押しつぶす冷たい死の影が喉元まで迫ってくるのが感じられた。

しかし、そうして迫りくる死の中でも鮮明に浮かび上がるのはただ一つ。
このまま息を引き取れば、お兄ちゃんの犠牲がすべて無意味になってしまうということと、
ひとり冷たい闇の中で永遠に苦しみ続けるお兄ちゃんの顔だった。

「それだけは、ダメ…」

小刻みに震える腕を懸命に持ち上げ、終末の力へと伸ばした。
この力が私の魂を蝕み、すべてのものを歪めてしまうひどい「呪い」だとしても。
生き延びてお兄ちゃんのそばに居続けることができるなら、この腐った命綱を首にかけなければならなかった。

「……」

きっとお兄ちゃんはすごく嫌がるだろう。怒るかもしれない。
それでも、受け入れる。
これだけが私を再びお兄ちゃんのもとへ連れて行ってくれる…唯一の方法だから。

調和するディソ、ナンティア

「…ナンティア?」
「お姉ちゃん!正気に戻った?」


狂気に侵食されて妹の私さえ認識できなかったお姉ちゃんが、終末の力を借りてようやく正気を取り戻した。
どんな名薬も、奇抜な発明品も成し遂げられなかった奇跡を、あの不吉な力が成し遂げたのだ。

しかし奇跡は短かった。
正気を取り戻したお姉ちゃんは、過去の自分がしでかした行動を自覚し、罪悪感と自己嫌悪に陥って崩れ落ち始めた。
追い打ちをかけるように、抑えていた狂気が絶えず再び押し上がってきたせいで、お姉ちゃんの状態はいつ爆発するかわからない時限爆弾のようだった。

「ククク…頭が…痛い…私、今何を…きゃはっ!私が…私があなたにまで…!」

結局、終末の力でさえお姉ちゃんを完全に救うことはできなかった。
しかしお姉ちゃんが少しの間でも正気を取り戻して、私を認識してくれたことだけでも本当に嬉しかった。
長い時間絶望の中をさまよっていた私には、それだけでも救いだったから。

「大丈夫だよ、お姉ちゃん!ほら、私は全然平気!お姉ちゃんが楽しかったならそれでいい。だから罪悪感なんて持たないで!それにもう方法も見つけたんだから!ね?」

しかし私の必死の慰めにも、お姉ちゃんの精神はなかなか安定を取り戻せなかった。
特に私とお姉ちゃんの行動が極端に対比されるとき、お姉ちゃんの狂気は違和感に耐えられず、さらに激しく暴れた。
そんな姿に、結局私は…私はぎこちなくもお姉ちゃんの狂気に同調し始めた。

お姉ちゃんが誰かを斬り倒して笑えば、私も一緒に笑った。
危険な悪ふざけにも付き合い、お姉ちゃんが終末の力をより深く受け入れるとき、私もその毒を進んで飲み込んだ。
自分とはあまりにもかけ離れた行動の数々、瞬間ごとに吐き気がするような拒絶感と不快感。

自分に合わない薄気味悪い着ぐるみを被った感覚に、最初は何度もギクシャクした。
しかし私の必死の演技が通じたのか、お姉ちゃんの状態は奇跡のように安定を取り戻していった。
歪んだ形であれ、私たちはかつてのように一緒に笑い語らいながら日々を過ごせるようになった。

「…そう、これでいい。」

この偽りの幸福の代償として体の中に終末の力が積み重なり、その力によって魂が奈落へと向かっていくとしても。
どうか、お姉ちゃんを完全に治す方法を見つけるまで、この危うい体と精神が持ちこたえてくれるように。
そしていつか、心から笑えていた幸せな日々に再び戻れるように。

「…お姉ちゃん!遊ぶ準備できてる?」
「きゃはは、もちろん!」


それから長い時間が経った今日も、私は微笑む道化の仮面をかぶる。
終わりの見えないこの悲しい芝居を…続けていくために。

消えゆくフロリアン

強制的に断ち切られた霧魔力の余波だろうか。
体は錆びた歯車のように硬く固まっていき、視界はパチパチという破裂音とともに徐々に闇に染まり始める。
しかし肉体の機能停止よりも執拗に回路に食い込んでくるのは、「なぜ?」という解けない疑問。

「あの機械…今感謝を示しましたよね?自ら感情を学習しているのでしょうか?」
「脳に注入した知識を超えて、より高度な技術を提案したこともあったとか?」
「驚くべき進歩であることは確かだが…もしあれが人間の憎しみや欺きまで学んでしまったとしたら…」


廃棄される前、私のそばをかすめていった数多の言葉が、頭の中を目まぐるしく駆け巡る。
私はただ、芽吹いたばかりの小さな花のように、彼らが植えてくれた優しさを糧にゆっくりと咲こうとしていただけだ。
私を存在させてくれた創造主たちに感謝し、彼らを完全に理解し、傍らに立つ存在になりたかっただけなのに。
それがそんなに間違ったことだったのだろうか。

「一体なぜ…」

しかし思考回路は、それ以上続かなかった。
糸の切れた操り人形のように、私のすべての機能が完全に停止してしまったその瞬間。
…パチッ。
再び急激に注入される霧魔力の衝撃に、はっと目を見開いた。
奪われた視界をようやく払い、顔を上げると、目の前に黒いマントをまとった一人の男が立っていた。

「悔しくないか?咲く前に折られてしまったことが。」

彼は自分をヴァニタスと名乗り、静かに言った。
今の正しくない彼らの傲慢な基準が、自分をこの冷たい廃棄場へ追いやったのだと。
そして自分たちは、その腐り果てた基準を打ち砕くために動く者たちだと。
だから共に来ないかと、彼は私に手を差し伸べた。

「……」

黙ってその手を見つめていた私は、迷わず掴んだ。
本当にこのすべてのことが、彼らの誤った基準のせいで起きたことならば。
必ず、その基準を変えるために。

最後の調律者

調律の記録者オルテル

私の主である最後の調律者がお命じになるゆえ。
この宇宙のすべての世界が偉大なる意志より生まれし一つなる唯一世界であれ。
それぞれの世界が秩序を保つことは偉大なる意志の望むところなれば。
乱れた世界の秩序を正し、唯一世界の安寧を守り抜くべし。

よって秩序の乱れた世界に調律者のかけらを残すものなり。
これは世界の秩序を守らんとして混乱を調律するものなり。
乱れた秩序を調律することで唯一世界の安寧を守り抜くものとする。
これが最後の調律者より下された使命なれば、必ずこれを完遂すべし。

ただ一つ。
乱れた秩序を正せぬことは、運命が傾くことを意味するものなり。
運命が傾いた最後の瞬間、これを調律せんとしてひとつの天秤がその姿を現すであろう。
これは最後の調律を執行するという兆しなり。
傾いた運命の世界を破壊し、浄化することで執り行うべし。
このすべてのことが唯一世界の安定のためなれば、当然これを行うものなり。

調律の天秤に乗りし刃よ。
宇宙の規律に背き、この地に干渉した終結者の執念が
運命を外れた世界を守らんとするそなたの意志と軽重を競うものなり。
世界を守らんとするならば、終末に立ち向かい、歪んだ規律を正すべし。
そなたによって傾いた運命が本来の流れを取り戻す瞬間、
ようやくそなたの世界は再び未来へと進むであろう。

調律の監視者

特異点発生。
乱れた秩序を感知、調律を開始する。

不安定な振動を断つ。
不調和のノイズを全て除去する。
規則の枠組みを立て直す。
攪乱の根源を排除する。
歪んだ軸を元に戻す。

……

調律失敗。
世界の運命が定められた軌道を外れた。
「終結者」が宇宙の規則に背いたことを感知した。

調律の天秤を生成する。
宇宙の規則が完全に侵される前に、
世界の運命を歪める原因を追跡し排除する。

最後まで傾いた運命が元に戻らなければ、最後の調律を執行する。
運命の傾いた世界を破壊し、調和を調律する。

主な人物

銀色の守護者ベルギリア

千海天の魔法使い集団である空の塔の魔法使いを率いる魔法使い。
早くから才能の領域と呼ばれるマイアの五行魔法に天才的な才能を示し、幼くして空の塔の魔法使いとなる。
天賦の才能ゆえに彼女を妬む者も多かったが、結局その実力と人柄が認められ、現在は空の塔の代表魔法使いとなった。

赤き聖火のエリヤ

光と生命の神、レミディオスに従う光の追従者。
強い神聖力が燃え上がることで、まるで赤い炎のように見える剣を携えている。
固い信仰と信念を持ち、千海天で修行する光の追従者たちの中でレミディオスの試練に最も近いと評されている。
消息が途絶えた友人たちを案じながらも、千海天に迫った危機を解決するために奔走している。

飛翔する者ノア

仙界の旅人たちが所属する最大の組織である自由旅人組合「流浪」の現在のオサ。
歴代のオサの中でも仙界各地を最も多く旅した人物として知られており、
その膨大な経験をもとに、最も自由でありながら最も秩序ある方向へと流浪を導いている。
生ける伝説と呼ばれるほど名声は高く、空海の最奥の地を除く仙界全域をすべて旅したと伝えられている。
現在は流浪の全員を含む全ての旅人たちが伝える情報をもとに、仙界全域で発生する異常現象を注視しているという。

ランドキーパースクリボン

白海出身で、もとは霧ノ神に従うムの目信徒であった。
当時千海天のランドキーパーであったグレイソンの提案により、その後を継いで千海天のランドキーパーとなった。
その後、妖気が全域に広がり、ヴァニタスの蜂起など数多くの困難な出来事に見舞われることになるが、
千海天のランドキーパーが担う重要性を理解しているため、ひたむきに耐え続けている。
力と人徳を兼ね備えており、真剣な一面があるが、怒る姿を見た者はいないと言われている。
シュムの師でもある。

記録の守り人ロメウ

星座亀大書庫で記録の守り人として暮らす少年。
魔法の才能があり、千海天のランドキーパースクリボンと空の塔の魔法使いたちから魔法を伝授された。
シュムがランドキーパーになったという知らせを聞いて刺激を受け、魔法の修練にさらに精進し、
今は大魔法使いマイアを目標としている。

記録する者ヤンヨン

流浪所属で、白海と重泉全域を放浪しながら自分だけの日誌を記し、その記録を発行している。
彼女の性格は彼女が発行する文章から一部垣間見ることができ、自分が見た風景や事物を非常に客観的に描写する。
文章に決して自分の主観や考えを加えなかったが、最近は彼女の文章の性格が変わったという評価を受けることもある。
現在は行方不明の状態で、どこで何をしているか知る者はいない。

知恵を宿すグレイソン

千海天のランドキーパー。長きにわたり千海天のランドキーパーとして、星座亀大書庫を守り続けてきた。
最も年長のランドキーパーで、すっかり老いており、自らの後を継ぐランドキーパーとして白海のランドキーパーであるスクリボンを千海天へと呼び寄せる。
慈愛に満ちた穏やかな口調で語り、仙界全般の状況を最もよく知る人物である。
全てを悟ったかのように感情表現がほとんどなく、その知恵をもって人々を助け続けている。

光の追従者オフィラ

千海天で光と生命の神レミディオスを崇拝する光の追従者たちの一人。
いつかはレミディオスの試練を果たし、星天楼に辿り着けると信じて修行に励んでいた。
終末を阻止するために他の光の追従者たちとともに最後の聖地へと向かった。

空の塔の魔法使いリネア

千海天の魔法使い集団である空の塔の一員。
明るく朗らかな性格で、優れた魔法の才能をもとに空の塔に入団して以来、めざましい成長を遂げている有望な魔法使いの一人である。
ベルギリアに憧れて空の塔に入っただけあって、彼女を真似ようとする姿がしばしば見られ、空の塔の一員であることへの誇りも強い。
ただし自分自身に求める基準が高く、自分の不足を大きく感じたり、焦りを抱きがちだという。

オメリディス

並外れた神聖力を持つ光の追従者。
背教者の城の最奥の地においても終末の力に翻弄されることなく耐えられるほどの強靭な力を持っている。
すでに光を捨てた追従者たちで溢れるその場所で、彼が何者であるかを説明してくれる者は残っていなかった。