エピソード

いまアラド大陸で何が起きているのか…

エピソード20.第4章/救援者

まず、魔界というところについて知っておく必要があった。

私はしばらく古代図書館をはじめ、
あまり残っていない昔の魔界の資料を収集することに力を注いだ。

それと共に魔界人らの伝説を注意深く調べてまとめた。
そしてルークがまた偶然メトロセンターの電力を稼働させると
その間はルークが建物で描いた絵がないか探した。

それで新しく描かれた形象を全て見ることができ、以前ルークが描いたのをいくつか見つけた。

ルークの絵は全て使徒の-または使徒として思われる者たちの-死を描いてあったが、
その中には私の知らない者たちもいた。まだ魔界に乗り込んでいない者たちだろうか?

だが、新しい使徒を探すヒルダの旅が止まったのはとうに昔のことだった。
それにまだヒルダとカインの死は描かれていなかった。
もしかして彼らは死なないだろうか?それとも彼らの未来はまだ確定されていないだろうか?

いつの間にか数十年の時が流れた。ルークの建築速度はあまりにも遅かった。
私は数年ぶりに建った新しい建物に灯りが点いたのを見ていた。
ところで、今度の絵は以前とは違うものだった。

<これが最後のようだな…。>

そう思った理由はそれがもう使徒の死を描いていなかったからだ。
私の足の下に一組の男女が豊かな世界を見下ろしている絵が広大に描かれていた。
男女がそれぞれ誰なのかは確かではないがルークが
カインとヒルダの死を描いていないことからおそらく彼らではないかと推定した。

しかし、これは私の予想していた結末だったため、微かに微笑んでしまった。
そうだ。これこそがヒルダがやろうとしていたことに違いない。

“テラの再創造”。彼女は魔界の古代文献と伝説に絶えず登場する
“減亡したテラの再創造”を本気で実現させようとしているのだ。
そしたらその材料は一つの世界の減亡と使徒たちの犠牲、すなわち死である。

古代のテラにはテラの滅亡と再創造の過程が具体的に描写された“創神世記”という文献が存在したと言われていた。
ほとんどは消失されたが次の一部の節が伝わっている。

-宣布する。犠牲は聖なるもの、我々が我々を死に至らせない。
-試練で鍛錬した刃のみが我々の心臟を突き破っては偉大なる意志に回帰させることができる。
-これが真の犠牲であり、消減はすなわち創造である。
我々が臨在するところと我々によって栄光になるものたちがこれらから創造される。

テラの歴史学者らはここで言う“我々”とは“テラを創造した神々”を意味すると解忻した。
そういうわけで古代テラの神々の犠牲と消滅によってテラが再び創造されるとの解析が可能なのだ。

ところが、ヒルダは何を思っているのか“テラの神々”と“使徒たち”を同一視している。
そうすることで新しい世界を切り開く一組、すなわち自分とカインを除いた他の使徒たちを犠牲させることであのくだらないテラが再び復活すると思っているのだ!

私は心奥から何かがほとばしるのを感じた。そうだった。遂に運命に出会ったのだ。
別に世界の滅亡や他の使徒たちの死などを気にしていたりはしなかった。
実は、私が死ぬ運命ではなかったらヒルダが計画を実現しようがしまいが私の知ったことではなかった。
私の心を激しくゆさぶるのは違うイメージだった。

“カイン”、“第1使徒”、“無敵のカイン”、“絶対者カイン”、くそ。
ヒルダの計画ですら彼は死なない。彼は私の死で成し遂げられた新しい地にただ淡々と踏み立ってヒルダと共に新しい世界の永遠なる神として残るだろう!
絶対許せない!

「クククク…クククク……ガハハハ……」

私の笑い声は段々とおかしくなったが反対に精神は段々とはっきりしてきた。

「ガハハハハ、私がヒルダの計画を阻止できればこの世は滅亡せず多くの命が助かることになる。
爆龍王として呼ばれた私がこの世を滅亡から救う“救援者”の役目を担うとは!!ククク」

激しく笑っていた私はいつの間にか静かに微笑んでいた。

「まあ、これくらいなら決して平凡な運命ではないな

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