エピソード

いまアラド大陸で何が起きているのか…

エピソード20.第6章/1ヶ月前

「おい、あれのことだが…私に見せてくれたもの……」

ルークは見向きもせず仕事を続けたが、私は構わず話を続けた。

「今度ヒルダから何かを手に入れてみようと思うが、今度失敗すると私はこのまま死ぬかもしれない。
私が火の中で死ぬのってまさかこの魔界ではないよな?
それは気持ちの良いことではない」

私の巨体は崩れ落ちている壁の上に危うく乗っかっていた。
壁が崩れ落ちるのではないかと心配して一度は振り向いてくれそうだがルークはまったく気にせずひたすら金槌で叩いていた。

使徒という奴らは私が事実を話してもどうやら信じてくれないし、何一つ役に立たん。
自惚れて自慢ばかりしている奴らで……私と似ている奴らだが、ガハハハ」

ルークは黙々とレンガを運んでいた。私は突然飛び降りてルークの前を遮った。
どんという音と共に砂があちこちに飛び散った。

「おい、じじい。あんた喋れないけど耳は聞こえるだろう?」

ルークは私をしばらく見つめては避けて通ろうとした。
私は今度こそ手を伸ばして必死に阻止した。

「私にこの全てを耳打ちしてくれたならば少しは協力してくれないと。
どうやら逃げるところが必要になりそうだが。
しかし、異空間の中で彷徨っているこの魔界という空間はヒルダのみが制御できる。
果たして私はどこへ逃げられるのか?」

ルークは視線を変えて遠くを見つめるばかりだった。
ただ遠くの山を見ているように

<おい…卑怯だぞ。視線を避けるのか。それとも本当に聞こえないのか?>

しかめていた私の両目は自然とルークが見つめていた方向を見つめていた。
ところでそこにはとても微かな照明が照らされ、普段はまったく見えなかった塔の形が薄く見えた。
あれは一体何だ?

私は直ちに塔へ向かって飛んで行った。
塔は果てしなく上へ上へと、魔界の空を突き抜いてそびえ立っていた。他の世界と繋がっているのか!
塔周辺にはある装置が施され、周辺の光を全て遮断して特定の角度で光を当てない限りは見えない構造のようだった。
この古狸じじい、異空間を突破できる通路を作っといては巧みに隠しておいたな。

再びルークのところに戻ってきたが、彼は相変わらず黙々と自分の仕事を続けていた。

「ハハ、実はじじいは私の味方じゃないか。こんなのをこっそり作っておいたりしてな。
あの塔の上にどのような世界があるのかは知らんが、まあ、この地獄よりはましだろう」

これは新しい感覚であった。私と同じことを考えている者がいるとは。

「老人一人が私の味方とのことでこんなにも心強くなるとは、ククッ。
確かに一人で寂しく戦っていた幼い時やつまらない王の時にはいつも私の味方はいなかったな。
実にありがたい。我々は友になったのだな、じじい?」

私は両手を広げてルークの肩を掴んだ。ルークの頭は私の掌の半分くらいだった。
私とルークの体の大きさの差が違いすぎて私が体を曲げてお礼をしているように見えたかもしれない。
私はしばらく見下ろしていては言った。

「ところで、こんなことを考えてみたが……」

私はそっと徴笑みを鋭さで満たした。

万一、じじいが予言者ではなく、ヒルダの命令で動いているのならば?
だから…まるで予言をしているように私に全てを見せかけたがその全てがヒルダによる緻密な脚本で私がその通りに行動するように誘導しただけだとしたら?」

ルークは微動だにしなかった。
その姿を静かに見つめていた私は大声で笑いながら言った。

「もしそうだとしたらあんたが私を逃走させるのもヒルダの計画に含まれていたらいいけどな。
とにかく私がここで生き延びたらもしかしたら状況が変わるかもしれん。
未来は決まっているのではないだろう?
まあ、そうでなくてもこの暗い魔界で燃えて死ななくて済むのであれば何でもやるさ、ククッ……」

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