エピソード

いまアラド大陸で何が起きているのか…

エピソード20.第7章/天界の支配者

あの塔は本当に外部への通路でアラド惑星の天界と繋がっていた。

時空間の境界を繋ぐ工法は宇宙全体でルークだけができることだった。

バカルは塔を通る際、あちこちにある多くの死体を見た。
おそらく塔の通路としての機能を試してみたのだろう。

バカルはあの塔を[死者の城]と称した。

死者の城を通じて辛うじて天界に逃げられたバカルであったが、
天界ではもう逃亡者の身分ではなかった。

そこにはバカルを相手できる者がいなかった。
彼は直ぐ様天界の支配者になった。
ルークが他の使徒に死者の城の位置を教えない限り、彼の天界支配が牽制されることはないだろう。

バカルは直ちにこの世界の構造を把握した。
下には巨大な大陸のアラド。上には逆さに付いている魔界。
魔界は数十年ものこの惑星に付いて全く動いていなかった。
ルークは魔界とこの惑星を繋ぐ死者の城まで建設した。

この惑星こそがヒルダが気に留めている“あの”惑星に違いなかった。
そしたらバカルのやるべきことは明らかであった。

全てのことをヒルダの思惑通りにさせないのが重要だった。
ヒルダの目標は結局アラド大陸のはすだからその通り道であるこの天界への道を切断すればいい。
すなわち、アラド大陸に通じる天城と魔界に通じる死者の城を封印すればいい。

やるべきことがもうーつあった。天界から魔法を完全に消すことだった。
そうすればヒルダが天界に来た時、彼女の強力な魔法力を直ちに感知することができるだろう。

しかし、天界から魔法を消そうというバカルの真の目的は他にあった。

<ヒルダの望むことは使徒たちの死である……だが、カインが私を殺せなかったように自らの手で使徒たちを直接殺すことはできないだろう。
彼女があれくらいの力を持っているわけでもないし。>

<試練で鍛錬した刃のみが我々の心臓を突き破っては偉大なる意志に回帰させることができる……。
まさかヒルダはこの惑星の野蛮な生命体らを訓練させ、いつかは使徒たちを倒すことができるとも思っているのか?
たとえ、それが可能であるとしても数百数千年はかかるはず……。>

その時、一つの考えがバカルの頭をよぎった。

<彼女が私に天界を支配するようにしたのは、もしかすると彼女の計画の一部かもしれない。
バカルという試練を与えて鍛錬させる。
そうだな、このバカルは彼らには乗り越えられない大きな試練である……
このままだと彼女の手で操れることになるかもな。>

<そしたら全てが彼女の計画通りにならないようにしなければならない。
彼女の計画とは違う方向に動くような変数を作り出さなければならない。
この種のような緻密で巨大な計画はとても小さな変数によって壊れやすいもの。>

バカルは大きな叫びと共に空の果てまで飛び上がった。

「野蛮な生命体らよ、お前らが想像すらできない最大の試練を与えるから強くなってみたまえ。
お前らに潜在力と自尊心があるのならば可能かもしれん。
だが、それはヒルダの予想を遥かに超えるものでなければならん。
それでこそヒルダの計画を狂わせる変数を作り出すことができるのだ。
私はヒルダが信じているよりもお前らを信じてみる。
お前らがいつかカインとヒルダを退治するその日を心待ちにしているのだ!!
だが、魔法のような一つの力に頼っては彼らを倒すのは到底不可能。
他の力がもっと必要なのだ。お前ら自ら必ず見つけ出さなければならん……!!!」

この時から天界では魔法使用が禁じられた。

天界の暗黒期とも呼ばれる500年はそのように始まった。

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