エピソード

いまアラド大陸で何が起きているのか…

エピソード20.第10章/とても小さな差

バカルの城の至るところが燃えていた。バカルは一群れの人々と向かい合っていた。

彼は怪我だらけで体中から血を流していた。
人々の立っている後ろには次元の亀裂の空間の裂け目が段々塞がっていた。

「お前ら全員が天界人ではないようだな。ならば私が当ててみよう。
お前らが未来から来た者たちか。言ってくれ。何年後から来たのか?」

「その通りだ。500年後の未来から来た」

「500年…再び500年を待たなければならんのか……。そしたら私の3頭の龍は退治したのか?」

「我々は大陸に転移された使徒たちまで何人か退治した。お前が作り出したとのあの粗末な龍は我々の相手などにならない」

「めでたい。基本テストは軽く通ったようだ。
だが、あの愚かな使徒の奴らは結局彼女の手によってとんでもないところであっけなく死んでしまったのか?
当ててやろう。お前らの地に降りてきて死んだ使徒たちはシロコ、ロータス、ディエジレだろう?

「遠い未来のことをどうして知っている?」

「フフ…運命的に順序が決まっているのか、意図的に彼女がそのように配置したのかは私にも分からん。
ところで、人間だけではなく天界人と魔界人に黒妖精まで肩入れをしているのか。潜在力があるなら何一つ逃さないとのことか、ヒルダ

「お前とおしゃべりをするためにあの遠くから来たわけじゃない。かかって来い。
歴史上では天界人たちが機械革命でお前を退治したこととなっているが、今日は我々が特別に古代天界人たちの手間を省いてやるぞ。
すでに大怪我を負っていて残念だが、悪人に慈悲などをかける必要はないもの!」

「クククク、天界人たちが私を殺したと教えられたのか?あんな機械ごときで?
悪いがこんな粗悪なものではまだ私を倒すことはできん。だが、あの機械らを同時に相手したせいで私の気力が多く消尽されたのは事実だ。
彼女はこの隙を狙ってお前らをここに連れてきたようだな。実に良い作戦だぞ、ヒルダ。
さあ、これからは私が真の歴史の勉強をさせてやる。もし私が今日死んだら、それはお前らの過去にもそうだったとのことだ。
すなわち、私を倒したのは天界人たちではなくいつもお前らだったとのことだ。あの事実は変わったことのないものだし」

「……!?」

「やっと理解ができたようだな。お前らの種族が強くなるのはこれから500年先。
ヒルダは、私に彼女の計画を遮られたまま時間だけが過ぎては自分の予想を覆すことが起きると思って私の死を早めようとしているのだ。
実はお前らがわざわざ遠い未来から私を訪ねてこなくてももう少しで私が大陸に降りようとしていたところだった。あ、それで彼女は焦っていたのか、クク。
ところで未来のヒルダは異空間を思うがままに操れるのか。お前らを正確な時間帯の過去に送るとはな」

周辺はすっかり燃えていた。そうだ、ルークは私が火の中で死ぬと暗示したな。それが今なのか。まだやることがあるのに。

「お前らの話を聞いたらもしかすると本当に今日私がここで死ぬかもしれないと思った。私の気力が消尽された今は確かに良い機会かもしれん。このまま死ぬことになってお前らの強さを確認できないのが非常に残念だが……」

バカルは胸騒ぎを感じた。彼が数百年もの努力してきた結果がすぐ目の前にあるのだ!彼は一人一人を注意深く見回した。
果たして私の努力が彼らにどのような影響を及ぼしたのだろうか。それとも彼らは彼女の操り人形にすぎないだろうか。

「お前らの強さはヒルダの思惑通りなのかそれともそれ以上なのか。私がヒルダの計画を500年遅らせる間、お前らの種族は少しでも成長しただろうか、
それとも何一つ変わることはなかっただろうか。これほど緻密に仕組まれたゲームではともて小さな変数で大きな変化をもたらすこともある

バカルは鋭い目を光らせて巨体を起こし、翼を広げた。その圧倒的な威容に冒険者たちは思わず後ろへ下がってしまった。全員の顔に本能的な恐怖が浮かび上がった。

「あ、もう一つ変数がある。いくら私の気力が落ちたとは言え、果たして本当にお前らが私を倒せるのか……?
今日私は死から逃げられないかもしれんが、私を倒したのがお前らではなく未来から来た他の者たちなら?

巨大な龍の口が大きく開いてその中で巨大な火の塊がめらめらと燃え上がり始めた。

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