冥王

真っ先に死んでいったのは誰だ?

光は闇に飲まれるだけだと、あるマヌケが言った。
頭ごなしに危険を回避しろと助言ぶって言い放った奴もいた。

だが見てみろよ、真っ先に死んでいったのは誰だ？

怖い、汚いと全力で逃げ回っていた奴が
真っ先に命を落としたじゃないか。

我こそが掟なり！

弱い奴に、歯が立たないほど強い奴と戦えと言っているわけじゃねぇ。
だからといって、いつまでたっても弱いままでいるつもりなのか？

人にバカにされ続けてきた裏通りの出身だからと
何もかもを諦め、世の中に文句ばかり言う奴はさっさと消えろ。

これからは我こそが掟なり！

照らせないなら闇となって全てを覆ってやる。
見逃すんじゃないぞ、本当に面白い戦いになるから。

グランドマスター

すべては己の不徳ゆえに。

勇み立ち…武の高みにこだわり過ぎたゆえ…敵を作ってしまった。
財を分け与えることに満足し、その後に起こることにまで考えが
及ばなかった。

俺を頼っていた弟や弟子が目に見える力に執着するようになったのも、
いつの間にか黒震団の志が変わってしまったのも、すべて私の不徳ゆえ。

武の純粋さを失ってはいけないと叫びながらも偽りある者を
処罰することを優先していた己が惨めで…恥ずかしくて…
顔を上げることができなかった。

真の武を悟る者が現れたとき

お叱りを受けたくても我が師はもうこの世には存在しない。
老いた体を隠して懺悔をしたかったが弟子たちの争う様を
目の当たりにしてしまった以上、見て見ぬふりをすることはできない。

脆く罪深い俺の前に、真の武を悟った者が真っ直ぐな眼で、
静かな意志を求めて現れたらこの秘伝を彼に渡し、
私の代りに黒震団を立て直してもらうのだ。

- 黒震団の壇主が残した手紙 -

念皇 光風霽月

稲妻が導く悟り

一人の男がいた。

己に従い、覇道を征いたが、もうじき訪れる悲惨な終わりを想うと男の顔は暗かった。
男の唯一の敵は他ならぬ時間であった。日が経つにつれ焦りは次第に大きくなった。

このまま命を奪われてしまうのか…。まだ成し遂げなければならないことがたくさん
残っているというのに……。しばらく悩み続けたが、答えを出すことはできなかった。
そして男は一人で深い山にこもった。何もせず死を迎えるのではなく、過酷な訓練を
通して自ら最期を迎えるために。

強靭な肉体が崩れ落ち、ついに滝の下で倒れた時、男は空から落ちる稲妻を目にした。
世の中を照らし、一瞬にして消える猛々しい光を見て男は悟った。
呼吸が変わり、消えかけていた肉体に新しい気運が吹き込まれた。

男は立ち上がり、声高らかに笑った。

その笑い声があまりにも大きかったため、山全体が崩れ落ちそうになったという。
後日、人々が男を訪ねた時、その姿は消え岩に刻まれた文章だけが残っていた。

万物の理

｢泰山になろうとしたが、足元の石ころを小さいと捨ててしまった。
千里を歩き、ふと後ろを振り向き気づいたのだ。泰山が空の下にあることを……。
この手では、空を握りしめることも…海を握りしめることもできない。
求めれば求めるほど手に入れることができない……。

もがき苦しんでも何も変わらない。この命が消え、倒れても土に戻るだけのこと。
俺の足が固まり草木になろうとも、世が消えることはないだろう。
生も死も紙一重。何をそんなに悩んでいたのだろう。
物心が無心となる瞬間、悟ることができるのだろう。

すべてを満たしたと思っても…そのうち、泡のように消えてしまうということを。
それが万物の理であることを……。」

覇皇

すべてからの解放

限界とは…。誰のために作った足かせなのだ。

乗り越えなければならないものなら…執着する必要などないだろう。
考えるな。

名をつける時、無限は有限となり、格は下がるだろう。手がなければ足で、
体がなければ…意志で。

俺を縛り付けるすべてから解放され、ひたすら前へ。

己の完成

誰も見ることのできなかった終わり。己を完成させ、ようやくここに
辿り着いたのだ。

ついに、「極」をぶち壊す。