シーフ新職業登場 くノ一見参

恐るべき暗殺者

はるか昔、黒妖精の王バラクルは各地に散らばった同胞を呼び寄せた。しかしそれを拒み、それまで暮らした地に 留まった黒妖精もいた。彼女たちは新しいものを受け入れつつも、自分たちの伝統と融合させ、独自の文化を生み出していった。

その子孫の中でも、武人の都市ショナン地域で暮らす黒妖精は、もっとも優れた能力を持っていた。
彼女たちの出生に関しては、さまざまな説が伝えられている。200年前、ショナン長老によって消された秘密組織
「バシリスク」の末裔。過去に反乱を企てた小さな部族「デュラミン」の子孫。どちらも定かではないが、昔から
ショナンで暮らしてきたことだけは確かである。

彼女たちは「くノ一」と呼ばれ、ショナンならではの技法である念とチャクラを自由自在に駆使しながら、黒妖精特有の
魔法も用いた。それらを融合して編み出したものが、「忍法」と呼ばれるくノ一の技である。忍法によって力を示し、
部族として勢力を持つようになったくノ一は、ショナンでもその名をはせていった。しかしそれは、恐るべき
暗殺者として畏怖の対象となることでもあった……。

｢伝説｣として隠蔽された存在

技を磨けば磨くほど、彼女たちは深い疑問を抱くようになった。「このまま影に身を潜め、暗殺を繰り返しながら
生きていかねばならないのか？」悩みに悩んだすえ、彼女たちはショナンの王族や貴族たちに忠誠を誓い、
暗殺者ではない仕え人としての道を約束してもらった。

彼女たちは、重要人物の護衛や情報収集のための潜入任務に当たった。くノ一の活躍ぶりが知られるにつれ、
権力者たちは彼女たちを従えようと躍起になり、やがて迎え入れたくノ一の数が、権力の大きさを象徴するように
なった。かくして、くノ一たちはついに暗殺者というレッテルを捨てることに成功したのである。

一方でその成功は、彼女たちを表舞台に出したくない権力者たちによって、その存在を一般社会から徹底的に
隠蔽されることと引き換えでもあった。衆目に姿を晒すことがないため、彼女たちは伝説上の存在だと思われている。
しかし、ショナンの王族と貴族たちは今もなお、くノ一を一人でも多く従えようと血眼になっているのだ。

非常に厳しい訓練

くノ一は、炎を用いる忍法を自由自在に駆使する。しかし、この炎は通常のものとは異なる性質を持っている。
水をかけても消すことのできない炎を、くノ一は指一本動かすだけで跡形もなく消すことができる。彼女たちの技は、
暗殺に対する恐怖を大きくした。そして、黒幕に関する証拠も一切残さなかったため、より一層恐れられた。

暗殺者から足を洗ったあとも、くノ一は忍法を使い続けた。使用する側も大きなダメージを受ける炎を扱うためには、
たゆまぬ訓練が必要であった。その訓練は非常に厳しく、耐え切れずくノ一の道を諦める者も続出した。
だがそれを乗り越え、炎を自由自在に操れるということは、忍法の試練に合格したも同義であった。

数々の伝説を生みだしたイズナビ

そんな手練のなかでも、とくに華麗かつ強力な炎を扱う者を「イズナビ」と呼ぶ。伝説の獣の名が付けられている
この呼称を名乗れる者は、片手で数えられるほどしかいない。それだけに、彼女たちの存在はショナンに大きな
影響を与えた。ショナンにいる黒妖精たちが、よそ者扱いを受けていることを考えると、じつに異例のことである。
初代イズナビが忍法を完成させ、くノ一に暗殺者ではない生き方の道を開いたことをはじめ、ショナンにおける
くノ一伝説のほとんどは、歴代のイズナビが成し遂げたものである。

くノ一の頂点に立つ者

「イズナビ」の名を受け継ぐ者の選定方法は非常に厳しい。「もっとも優秀な者一人」を選ぶのではなく「ある基準を
満たしたもっとも優秀な者」でなければならないため、イズナビが存在しなかった時期もある。イズナビの有無は、
くノ一が持つ影響力に直結する問題である。しかし、彼女たちは焦らずに時間をかけ、慎重にイズナビの名に
ふさわしい者を選んできた。

また、当代イズナビの実力が落ちたと判断された場合は、直ちにその名を奪い合った。すなわちイズナビとは、時代において常にくノ一の頂点に立つ者を示しているのである。